こんにちは、園田です。
不公平だと思いませんか?世の中には生まれたときから”器用な人間”がいる一方で、人一倍やっても”不器用な人間”もいたりします。
ぼくは不器用ですが、”上達”について勉強して苦手意識が消えました。なんとか博士号をとって、大学で研究をしています。話も苦手でしたが、今では人前で1時間でも話せます。(芸人さんのような話芸はないです。(笑))
そういうことで、この記事では、上達の法則について書きます!もちろん、個人の経験則だけではなく、参考文献をもとに科学的な法則についてまとめていきます。
著者は心理学専攻の大学教授で、認知心理学・学習心理学・記憶心理学をベースに科学的でありながら、わかりやすく解説しています。さらに詳しく知りたい人はどうぞ!
法則1:上級者をみる
何か頑張って、上手くできるようになったことを思い出してみて下さい。そのときに、お手本となる人物が身近にいたはずです。憧れの先生、先輩、あるいは、後輩。はたまた、テレビの中のアイドル、俳優。
そして、そのお手本の人をずっと観察していませんでしたか?
楽器演奏なら、単品のワンレッスンを受けてみる。自分でふだん気づいていないちょっとしたことの指摘を受け、それがきっかけとなって自分の成長がうんと促進されることがある。とくに、自分で気づいていない長所の指摘を受けたときは、恩恵が大きい。また、そのときどきの自分の技術的な課題を克服する手段について示唆が得られることもある。
将棋や碁なら、駒落ちや置き碁で、高段者の対局指導を受けてみる。そうすると、技と発想の大きさ高さがまったく異質であることがわかる。
『上達の法則』(同上) p.163-164
上級者が近くにいることが大事なのです。たとえば、部活動も上級者が身近にいる環境を提供しています。
ここでは、上級者を「まあまあ一人前のレベルに到達した人」とおおざっぱに定義します。(参考:『上達の法則』(同上))
また、ダイエットや勉強も1人では上手くいかないケースが多いです。教えてくれる人がいれば、結果も上達のスピードもちがいます。
そんな何かを身につけるための場所が現代ではそろっています。ヨガや英会話、ダンスなどの習い事などをはじめとして、インストラクター・セミナー講師の養成スクールまであります。
環境のためにお金を払うのも上達のための1つの選択肢です。
上級者を観察すべき根拠として、ミラーニューロンがあります。この神経細胞は、人間やサルにおいて、自分と他人の行動を同じとみなす”鏡”のような反応をします。いわば、上級者の動きをみて、自分が動いたように”錯覚”します。
法則2:身体感覚をみがく
上達の概念にスキーマ(枠組み認識)があります。これは、技能に関して「必要な知識とプロセスが”身体感覚”と適切に結びついている状態」です。
たとえば、
- 車両感覚: 車がどのくらいの大きさかでどう動くかを把握する空間認知能力
- 距離の推測: 座った状態でテーブルにあるモノがとれる距離にあるのか推測する能力
- 暗算: ソロバンの習得者は、足し算のときにソロバンを思い浮かべて計算できます
この例からも、スキーマは身体感覚が重要です。例えば駐車なら、車両感覚があれば応用がきいてどのスペースでも停められる。また、はじめての駐車場でも対応できるようになれます。
さらに、超上級者はより洗練されたスキーマ(身体感覚)を形成しています。
卓球の超上級者は、通常のラリーなら、目隠しをして打ち続けることができるという。これは球を打つためのスキーマが形成され、そのスキーマのなかに聴覚刺激も取り込まれているためである。そのため、聴覚だけでも、かなり正確に、相手の球の位置、スピード、スピンなどを推測し、対応ができるのである。
同上、p.69
身体感覚で「枠組み」をおさえ、反復練習で細かい”感覚の違い”をとらえていく。それがスキーマを高める方法です。
スキーマの身体感覚は、心理学者J.J.ギブソンが提唱したアフォーダンスと関係があります。椅子になんとなく座ってしまう。この時、人がイスに座るのではなく、「イスが人を座るようにアフォードした」と表現します。これが“イスのアフォーダンス“です。
法則3:言語化する

イチローは言葉遣いが独特です。
「ファウルした打球が、そこにはフェアの打球も含まれますが、バットにボールが当たる位置がイメージとずれるように感じたんです。やけに詰まる、と。それで、そのときに気になったのが上体の固さだった。それをはっきり自覚したのはあのオールスターの、シリングの一球目だったですね」
「力の伝達の問題というか、体のしくみの問題だと思う。バットを持った手をできるだけ柔らかく使いたい、と思っていても、ひざから下が固いと自然に上が固くなる」
「ヘッドスピードが速くなっているので芯でとらえられるわけです。感覚として、ストライクゾーンの幅ではなく、前後の奥行きにそれまでよりも余裕がある。だから、ボールを(体の近くに)引きつけても芯にあてることができる」
『イチローの流儀』(小西慶三)
このようにイチローをはじめとしたプロスポーツ選手は、感覚の言語化を当たり前のようにやっています。これが身体感覚の土台になっているのです。
とくに、言語化は長期記憶を形成するための欠かせないステップです。
情報を記憶するプロセスは下図のようになります。
『上達の法則』 p. 65
コード化は”言語化”です。何かを学習するときに、自分の言葉に置き換える作業を必ずします。そうすることで、ワーキングメモリ(短期記憶)に入ります。さらに進むと、考えなくてもできる(長期記憶が形成された)状態です。
上達がはやい人は、この言語化の能力が高いのです。同じ情報にふれても、すぐに自分の言葉でつかんで身につけてしまいます。
以上から、上達のスピードをあげるために言語化の練習が効果的です!
- 宣言型知識:自分の名前、歴史の年号、英単語など、日常的な意味での「知識」です。「○○は△△である」の宣言型になっている知識。
- 手続き型知識: 宣言型になっていない知識。「アレをして、次にコレをする」というプロセス型の知識。
- チャンク: 情報の”大まかな”単位。「でんわ」なら3チャンク、「電」「話」なら2チャンク。人間の短期的な記憶は、7±2チャンクとされています。
法則4:限定する
基本が身についてきたら、対象・期間を決めて精密練習(限定)をしてみる。
日本のクラシック音楽家をたくさん育てた方法として名高いものに桐朋音楽大学の故齋藤秀雄教授による「齋藤メソッド」というものがある。ひとつのオーケストラ曲を選ぶと、おびただしいエネルギーを注入して、その一曲だけを長い時間をかけて仕上げていく方法である。ときには、半日かけて、数小節しか進まないということがあったそうである。ところが、このくらい精密に一曲を仕上げていくと、ある時点から、曲というもの、演奏という行為について、目が開けるようになるということである。浅く何曲も学ぶというよりも、音楽の目を開かせることになったと多くの人が述懐している。小澤征爾もこの齋藤メソッドで学んだひとりである。
同上、p.148
対象をしぼりこんで練習をすると認識力が高くなり、細かい違いがわかってきます。ちょうど、イチローにとってのバッティング練習の一球一球が違うように。
精密練習として、深い模倣や暗唱がすすめられています。
- 文章:小説の冒頭部分の文章をうつす
- 音楽:特定の一曲を繰り返し練習する
- 英語:好きな英文を抜粋して暗記する
- 料理:1つのレシピを何度も作ってみる
このように対象をしぼりこんで深く学んでみると、大きな飛躍につながるでしょう!
法則5:スランプを知る
スランプの原因は4つあります。
- 心理的・生理的飽和
- プラトー
- スキーマと技能のギャップ
- 評価スキーマと技能のギャップ
同上、p.180
「①心理的・生理的飽和」は、「飽きた」「疲れた」という心理状態です。この場合は、積極的休息(気分転換)が大事です。なにか別のことをやってみたり、基礎の反復練習をするうちに、意欲が回復してきます。
「②プラトー」は技術向上のための予備期間(停滞期)ですが、知識的なことと技能的なことのバランスが悪くなっている段階です。練習量のわりに向上がないので、心理的負荷が生じやすい期間です。
「③スキーマと技能のギャップ」は、“認識力“と技能のギャップです。「あれをしたらこうなる」と認識していても技能がついてこないため、不満がたまりやすい時期です。
「④評価スキーマと技能のギャップ」は、技量の評価能力だけが上がっている状態です。「この人はこういう点が優れている」「自分はこの点が劣っている」のがわかるが、問題解決に至っていない状態です。
スランプは必ず訪れますが、原因を知っていれば、落ちついて対応できるはずです。
タイトルのとおり、スランプ克服の方法がまとめられています。著者は認知心理学、学習心理学などの知見から、<スキーマ>や<コード化>といった理論を構築し、独自のスランプ克服法を提案されています。たとえば「ひな型トレーニング」「下位技能の訓練」「理論書を読む」などの具体的な指南が盛りだくさんです。スランプに悩んでいる人にオススメです。
まとめ

上達の5大法則はいかがでしたか?思った以上に内容が長くなってしまいました。(笑)
さらに詳しい内容について知りたい人は『上達の法則』(岡本浩一)が参考になります。
それでは、”上達”にハマってみて下さい!
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